クラウンノナミダ。

クラウンは正直になれない。だから、おどけ、ふざけ、笑われようとする。不器用な小心者のねじれた日常。

想定外の夜明け。

弟の誕生日企画。
客で行って前で楽しんで。
誰と会うでもなく、こっそりと。

終わって、道路挟んで向かいから、待ちの様子を眺めていた。
冬のように寒いから、しっかり着込んでー。と連絡した。

しかし、すごい人だった。

皆、直接プレゼントを渡したいんだろうなとか
声をかけたいんだろうなとか、そういう波だった。
人だかりがすごかった。

しばらく街に消えていくのを眺めていた。
皆、散っていった。

自分もどこかでご飯を食べようとふらふらしていたら、
懐かしい通りにいることに気が付いた。

あの時の場所だ。

そう思った瞬間に、靴ひもを結ぶ兄の姿が目に入った。

気持ち悪い自分に苦笑いしながら、声をかけた。
後ろからメンバーがきていた。
そのまま逃げるように去るわけにもいかなくなった。

自然と合流した形になった。
違和感なく受け入れてくれた弟よ、そしてかえるさん、ありがとう。
ごめん、気持ち悪くて苦笑

目の前にはまさかの緑さん。隣には兄さま。

なんかいろいろ話した笑

過去のグループの元管理さんのことを絶賛していた。
お客さん目線を持った素晴らしい仲間だったと。
雇おうよ、兄さん、とごり押しの弟。
胸がチクチクする。俺、なんかできてるかなって意味で。

この夜、ずっとそれは続いた。

ただ、べろんべろんの弟の肩を担ぎながら、
今日のコーラスはぎりぎりだったとか、
あそこはかっこよかったとか、あーだこーだしゃべるのは楽しい。
こういうやり取りをするたびに思う、
弟にとって、兄ににとって、俺ってどういうポジションなんだろうと。


そのままカラオケになだれ込む。


兄さんも笑いながら付き合ってくれるあたりは優しい。
入って早々グループ祭り。自分好きやな!笑
死ぬほど歌ってた。歌い足りないとか、馬鹿か笑

緑さんが、俺のために歌い上げてくれたのは、絶対忘れない。
見直した。緑さん、こんなにうたスキなんだと笑

お祝いして、大好きなグループを大熱唱するっていう謎のタイム。

本物を前に歌い上げるとか、とんでもないことをしたもんだぜ・・・俺。

そのまま弟を元管理と緑さんが連れて帰り、
なぜか俺は兄と一緒に家の前にいた。

明日、どうしても外せない仕事があるというので、
モーニングコールしてあげようとは言ったが、
家に泊まるなど言っておらぬぞ、兄者よ。

しかし、ここまできて、タクシー代を持つ勇気もない
(だいぶ遠くまで反対向いて走っていた)

そのままなだれ込んだ。

思わず部屋を見まわしたら、
照れ笑いを浮かべながら「狭くてごめんな」といった。
こんなもんでしょ、一人暮らしって。
それより、俺はここからいくつもの素晴らしい作品が生まれているんだ
ということの方がわくわくした。

気持ちよく酔っていた兄は、服を脱いでそのまま布団に入った。
おいおい、さらけ出しすぎ。下半身見えとるぞお前。気を遣わんかい。
そして、お風呂の蛇口をひねって、お風呂どうぞー・・・
と言った後は、すやすやと寝息。

・・・ちょっとまて、俺の布団はないのかよ爆

自由だ。
こいつ、自由すぎる。

完全に友達が家に来ました、ご自由にどうぞ状態じゃねーか。

お前-------!!!!!

夜中そのまま出ることも考えたが、さすがに明日の朝起こさないのもまずい。
かといって、何も持ってきてないで、風呂に入るほど無防備なこともない。
静かに蛇口をひねって止め、悩んだ末、ビーズクッションを手繰り寄せて、
ロングコートをかけて寝ることにした。
布団に潜り込むようなバカは考えなかったぞ。さすがにな。

いつかのどーむのパスが、壁に貼り付けてあった。

胸がギュっとした。
なんだ、なんてかわいいじゃないかと思った。

少しだけ、寝たと思う。見事、次の日に寝違えた。
朝は早い時間に何度も目が覚めた。
予定時間より少し早い時間に無事に起こすことができた。
はい、お願いだからまずはズボンをはこうか笑

着替えのために飲み物を買いに出た。
ついでに自分の身支度を整える小物も買いに出た。
結果、ホテル泊まるより高くついた笑

おかしかったのは、朝起きて一番に弟の客の話になり、
弟をどう輝かせるかという話になり、
最後の最後まで弟の話だったことだ。

2人してずっと弟の話してんだぜ、おかしかったよ。

どんだけ好きなんだよ。

風呂入りながら戸を開けてしゃべって
顔洗いながらしゃべって
コーヒー飲みながらしゃべって
支度しながらしゃべって
道中しゃべって
電車に乗るまでしゃべって

女か!というくらい良く話した。

後でわかることだが、
自分の部屋に入れたがらない人だと、かえるさんから聞いた。


俺は一体、どういうポジションなんだよ。

あと、歌メッチャうまいね!と言われたのは、何かのご褒美だと思う。
お酒の力と、寝ぼけてて、忘れてくれればいい。
本物に言われることほど恥ずかしいことはない。
俺は、かつてカラオケ教室に通う人に歌が下手だと言われた人間なんだぜ。
あれで自信なくしたんだぜ苦笑
だから、嬉しかった。
あの曲も、俺、めちゃめちゃ歌うんだぜ。
本物を前に、絶対歌わないけど。


夜はこっそり、弟のおしゃべり企画へ潜入。
昨晩のことを聞き出そうと客は必至だったが、
見事に口を割ることはなかった。
本当によくできた子だ。後ろめたいものは何もないけれど、
変な疑いをもたれるものは隠し通す。素晴らしい。
おそらく、元管理の名前を出して確信を持ちたかったのだろうと思う。
あと、最近兄の仕事場によく来る人のほとんどを弟の方でも見るっていう複雑さな。
所詮、今、兄を追いかけてる人は、皆、弟流れなのだ。
本当に昔からの客で、場所問わず追いかけてるのは俺くらいじゃないのか。
それが、つらかった。

しかし、あれだ。
あの企画、中途半端な時間まで残して、
女を歌舞伎町に野放しにしたらあかんて。
今度、機会があれば、それは忠告しておかんとな・・・。
紳士さは大事だぜ、弟よ。

すごい週末だったと思う。
兄の家に泊まるのは予定外だったが、
それ以上に兄が俺をどう扱ってるのかよくわからなくなった。
管理人として使ってくれたのか、仲間として頼ったのか。
でも、相手としてのソレ的な扱いはなかった。

そういえば、前もそうだった。
地元に来た時に宅飲みした時もそうだった。
普通に招き入れてくれたのだった。
こちらは遠慮したのに、だ。

かえるさんの言葉が、よけい頭をよぎる。

俺、いったい何なんだよ。